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バイオテクノロジー・ビジネス


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バイオテクノロジー・ビジネス

世界的な人口の増加と新興国の経済成長に伴って、将来的に食料需要は逼迫する可能性が高い。一方、水が自然に循環する量は増えるわけではなく、環境面を考えると農地の拡大にも限界がある。特に日本は食料自給率が41%と、1億人以上の人口を抱える国の中では著しく低い。「食料ナショナリズム」が強くなるつれて農業の重要性を再認識するとともに、農業だけはなぜ個人経営でなければならないのか、将来的にもきちんと食料を確保できるのかといった、今後のあり方を真剣に考えざるを得なくなるだろう。

植物工場には様々なメリットがある。

まず第1に「安全性の高さ」である。基本的には閉鎖された空間で栽培するため、人間が完全に環境を制御できる。病原体や害虫、大気汚染や土壌汚染などの心配がなく、クリーンな環境を実現できる。農薬散布も不要になるため、完全無農薬で安全な農作物を作ることが可能だ。洗浄もごく簡単に済むなど、収穫後のメリットもある。

第2に「安定供給」である。光や温度、湿度、与える養分からCO2濃度に至るまで、農作物にとって理想的な環境を常に保つことができる。猛暑や暖冬、台風など天候にも左右されない。そのため、農作物を安定供給することができる。今後需給が逼迫してくると、生産者側にとっても安定供給で計画的に収益が見込めるのは大きな魅力になるだろう。もう一つ、「生産効率」という点でも農作物にとって理想的な環境で成長を促進できるため、自然栽培よりも短期間で出荷することができる。
2階層、3階層など生産空間を立体化することで土地の利用効率を向上することもできる。特に農地に限りがある日本では、単位面積当たりの収穫量を向上できることは大きい。日本では農地取得に法的規制が設けられているが、「工場」であればこのような制約を受けないで済む。また、水資源の利用という点でも、露地栽培よりはるかに効率が良い点も見逃せない。

一方のデメリットは、栽培品目が限られていることである。現在、植物工場で生産できるのは、葉菜(レタス、サラダ菜、ホウレンソウなど)のほか、トマトやナス、キノコ類(エノキダケ、シメジ、エリンギなど)、一部の果物(メロン、イチゴなど)などがある。だが、それでも閉鎖環境で工業的に生産できるのはごく一部に過ぎない。

もう一つ大きな課題はコストである。まず設備が高価であること、さらに電気代など運営コストも高い。そのため、技術的には栽培可能でも、採算ベースに乗せられる農作物はさらに限られる。農林水産省も助成金を出すなど積極的に支援しているが、収支のバランス化は容易ではない。特に技術的に大きなカギとなるのは「光」である。植物工場の光源としてはHID(高圧放電)ランプが使われることが多い。自動車のヘッドライトなどで一般に使われているものとほほ同じだ。太陽光と色温度が近く、フィラメントがないため長寿命なのが特長である。最近は消費電力が少ない高輝度LEDも使われ出した。だが、他の光源に比べるとコストが高く、湿気に弱いなど課題も多い。技術革新でこのあたりがクリアされると、一気にブレークする可能性がある。

工場で植物を作ることについては、個人によって見解が分かれるだろう。たぶん違和感を感じる人の方が多いのではないだろうか。無菌に近い屋内に閉じ込められることで、やがて生物として自然の中で生きる力を失うのではないか、DNAが画一化することでいつか一気に全滅するのではないか、密室の中でバイオテクノロジーが悪用されるのではないか-など、心配事を挙げればキリがない。従来のままで安全な食料が将来にわたって好きなだけ確保できるのなら、「植物工場」など誰も望まないだろう。問題は、このままいくと世界の潮流が変わって、必要な食料が確保できなくなるかもしれないということなのである。価値観が多様化する中で、植物工場で生産される農作物は「新たな選択肢」と捉えるべきなのだろう。

既に様々な企業が植物工場の事業に乗り出している。農地法の改正で株式会社が農業へ参入しやすくなったことに加え、食の安全・安心に対する関心が高まっていることが背景にある。消費地に近いところで事業を展開することで、より新鮮な状態を供給できるだけでなく、都市圏に近いほど人手を確保しやすくなる。就労者も、工場を運営するのと似た感覚で働くことができる。昨今は農家の人手不足や高齢化が問題になっているが、それを解決する手段として自動化やロボットの活用は十分に考えられる。植物工場は、現代の農業が抱える様々な問題を解決できる可能性を秘めている。設備投資や研究開発のために大きな資本が必要になるため、植物工場は大企業中心のビジネスになっていくだろう。

「再生可能」という価値観が加わると、これからの農業は食料生産に留まらなくなる。食料や資源、エネルギーなど様々なものを再生可能なかたちで作れるからだ。植物は太陽のエネルギーを使って直接「物質」を作れる唯一の存在だ。「光合成」はいわば太陽光発電と化学プラントを併せ持ったようなものであり、現代のいかなる先端テクノロジーよりも優れているのだ。

トヨタ自動車は2001年から三井物産と共同で、インドネシアで生分解性プラスチックの事業に本格的に乗り出している。これは、現地で生産されるサツマイモを発酵させて、生分解性プラスチックの原料となる乳酸を製造するというものだ。既に一部の車種で利用が始まっており、今後は自動車に留まらず、汎用品として事業を広げていくことを計画している。
さらに、対象を生物全般(微生物など)まで広げると、「バイオ産業」として将来の可能性はもっと大きくなる。例えば筑波大学や国立環境研究所などの共同研究チームは、藻の一種である「ボトリオコツカス」を培養して油を作る技術の研究にを取り組んでいる。ポトリオコツカスは、油を生成するというユニークな特性を持つ。様々な種類の中で増殖しやすい株を発見し、さらに、より効率良く培養する方法を研究している。現在の1ha当たりの収穫量は年間約120tである。年間30万haの規模で生産すると、1L当たり155円程度になると試算している。
生産効率はトウモロコシやペニバナの100倍以上で、国内のバイオ燃料より安く生産できる。今後、中国やインドなどの経済成長などによって需要が伸びるため、資源価格は中長期的にも上昇が見込まれる。将来は、さらに採算を取りやすくなるはずだ。
将来的にはゲノム技術とIT技術の組み合わせで「人工光合成」を実現できるようになるかもしれない。光の力でエネルギーや原材料を人工的に生産できるようにすること、それも、植物より高い効率を実現することが、一つの究極のゴールになると筆者は考える。
生物は物質の「回収」にも驚くべき能力を発揮する。2009年6月、京都大学の研究グループは、工場廃水などに含まれるレアメタルを、遺伝子組み換え酵母を使って回収するという基礎技術を開発したと発表した。これは、遺伝子を組み換えた酵母を使い、排水や海水からレアメタルを回収するものだ。レアメタルなどを微量に含む溶液に投入することで、酵母の表面に金属が吸着すると共に、その重さで沈殿させる。これを別の溶液に移して濃縮し、PHを調整することで金属を回収できる。酵母は10億個程度までは簡単に培養することが可能で、金属濃度1ppm(1/10億)以下という極めて純度が高い溶液に入れても、約1時間でモリブデンは約7割、ニッケル、カドミウム、銅はほぼ100%回収できるという。レアメタル確保の切り札は、実は畑違いの「バイオ」に
あるのかもしれない。

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